志賀直哉の代表作は、唯一の長編『暗夜行路』と、短編『城の崎にて』『小僧の神様』『和解』などです。無駄のない簡潔な文体から「小説の神様」と称されました。
「小説の神様」という呼び名は、一語一語に無駄がなく、事実を正確に、しかし冷たくならずに描き切るその文章に由来します。多くの作家が志賀の文章を手本として書き写したといわれ、日本語の散文の一つの到達点とみなされてきました。
『城の崎にて』(1917年)は、電車にはねられた療養中の「自分」が、蜂・鼠・イモリの死を見つめながら生と死の距離を静かに考える短編です。わずか十数ページの中に志賀の文体と主題が凝縮されており、日本の短編小説の最高傑作の一つに数えられます。
『暗夜行路』(1921〜1937年)は志賀唯一の長編で、出生の秘密に苦しむ主人公・時任謙作が、放蕩と結婚、妻の過ちを経て、大山(だいせん)の自然のなかで和解に至るまでを描いた自伝的大作です。完成までに16年を要しました。
1883年に宮城県石巻に生まれ、学習院を経て東京帝国大学国文科中退。武者小路実篤・有島武郎らと雑誌「白樺」を創刊し、白樺派の中心作家となりました。1949年に文化勲章を受章し、1971年に88歳で死去。作品は青空文庫で無料で読めます。