飢えた甥のためにパン一切れを盗んで捕らわれ、脱獄を繰り返した末に19年間服役したジャン・バルジャン。出獄後も前科者として社会に拒まれますが、一人の司教から受けた慈悲をきっかけに生き方を変え、実業家として成功し市長にまでなります。それでもなお彼を執拗に追う刑事ジャベールとの対決、そして薄幸の女性ファンティーヌとその娘コゼットとの出会いが、物語を大きく動かしていきます。
19世紀フランスの貧困や司法制度への鋭い批判を織り込みながら、一人の男の贖罪と愛を壮大なスケールで描いた作品で、ミュージカルや映画の原作としても世界的に知られています。かつて黒岩涙香が『ああ無情』の邦題で翻案・紹介したことでも有名ですが、青空文庫に収録されているのは豊島与志雄による原作に忠実な完訳です。
訳者の豊島与志雄(1890〜1955)はフランス文学者・小説家で、芥川龍之介・菊池寛らと同時代に活躍しました。作品が長大なため、青空文庫では「序」から「第五部」まで複数の作品ページに分かれて収録されています。