法学部を中退した貧しい青年ラスコーリニコフは、「非凡人は社会の法を超えて悪をなす権利がある」という独自の理論に取り憑かれ、強欲な高利貸しの老婆を斧で殺害します。しかし犯行後、彼を待っていたのは達成感ではなく、良心の呵責と底知れない孤独でした。
彼を執拗に追う予審判事ポルフィーリイとの心理戦、そして自らも身を落としながら家族のために生きる娘ソーニャとの出会いが、ラスコーリニコフを少しずつ追い詰め、そして救いへと導いていきます。犯罪そのものより、犯罪者の内面をどこまでも掘り下げる心理描写が本作最大の魅力です。
作者フョードル・ドストエフスキー(1821〜1881)はロシアを代表する文豪で、シベリア流刑の経験を経て人間の罪と信仰を生涯のテーマとしました。青空文庫に収録されている翻訳は、ロシア文学者・米川正夫(1891〜1965)によるものです。